『最後の遣唐使』

佐伯有清 著
講談社学術文庫
ISBN978-4-06-159847-8
実際に唐に赴いた最後の遣唐使となった第十七次遣唐使について書かれた本。
基本的には、使節団の動向を追ったもので、その他、最後の遣唐使のあり様から遣唐使廃止の歴史的意義等が考察されている。一般向けに書かれているので物語っぽいところはあり、そのくせ一般向けというにはやや難しいような気がするので少々中途半端な本ではあるが、歴史が好きな人ならば面白く読める本ではないだろうか。
円仁の帰国の子細が書かれていないので関連した部分が捉え難くなっているとか、少し分かり難い部分もあるが、余り大部の本でもないし、大体はすんなり読めるのではないかとしておきたい。
興味があるならば、読んでみても良い本だろう。
以下メモ。
遣唐使は後の時期ほど遭難が増えているが、使節の人員の増加に伴って船が大型化したことが大きな理由になっているだろう。9世紀から来航が盛んになった新羅船は、中型船であり、構造が簡単で、風波に翻弄されても船体の損傷が小さかったと考えられる。
・第十七次遣唐使の派遣を強く後押ししたのは、天台、真言の平安仏教勢力だった。彼らは、学僧を送り込むことで勢力の拡大を狙い、朝廷の側にも、行き詰まりつつあった律令体制に代わって、彼らが掲げた鎮護国家をたのむ必要があった。