『巨大翼竜は飛べたのか スケールと行動の動物学』

佐藤克文 著
平凡社新書
ISBN978-4-582-85568-5
生物のスケーリングに関する話。
簡単にいうならば、生物の形が相似形ならば生物の能力も大きさに比例したものになる、空を飛ぶには体重が軽い方が良く羽ばたく力は体重が重い方が強いが、羽ばたく力は体重が増えても比例係数が小さくしか増加しないので、どこかで限界が来る(ミズナギドリ目の鳥で著者が実際に試算したところ、41kgと出た)、絶滅した巨大翼竜は、例えばケツァルコアトルスが体重70kgと想定されているが、こんな大きさでは飛ぶことができないのではないか、というもの。
基本的には、結構面白い。興味があるならば、読んでみても良い本。
ただし、本書のかなりの部分は動物の行動データを採る著者の研究の話になっていて、それはそれで面白いとは思うものの、内容が二つになってしまって虻蜂取らずの感はある。
本書のテーマだけが知りたいという向きには研究の話は邪魔だろうし、研究上の苦労などが書かれた簡単なエッセイがいいという人には、比例の計算などが入ってくるのは煩雑で難しいだけだろう。
両方楽しめるという人向きか。
それで良ければ読んでみても良い本だろう。

以下メモ。
・ペンギンなどが深い場所に潜っていくと肺や羽毛にある空気の体積が減るので、受ける浮力は潜れば潜るほど小さくなる。
・ウミガメも一応ポリ袋が餌でないと判断できる(場合がある)。
マンボウは、ペンギンが両手を使って泳ぐように、背びれと尻びれを同時に動かして泳ぐ。実際にはぷかぷかと浮遊するのではなく、結構泳いでいた。