『完本 1976年のアントニオ猪木』

柳澤健
文春文庫
ISBN978-4-16-775365-8
1976年に行われた四つの猪木の試合を中心に、プロレス格闘技の歴史を描いた物語。
物語の筋としては、現実の興行面では馬場に勝てなかった猪木が打ち出した戦略が、プロレスは最強だ、というファンタジーであり、その形が、アリとの試合だった、以後の日本のプロレスと格闘技は、そのファンタジーに乗っかって生存してきた、というところか。
物語なので分かりやすく面白いし、1976年に猪木と戦った相手の事情などもそれぞれに興味深いので、そうした物語で良ければ、読んでみても良い本だと思う。
物語であるということは、分かりやすい反面、現実は物語ではないのだから、どこまで捉え切れているのかという不安も、ない訳ではないが。
そうした物語で良ければ、という本。
興味があるならば、読んでみても良い本だろう。

メモ一点。
アメリカで主流のカレッジ・レスリングでは、マット上に相手の両肩を二秒間押さえつければフォール勝ちになるが(国際ルールでは一秒)、レフリーは、フォールの状態にあると認めた時マットを一回叩き、更に一秒毎にマットを叩くので、プロレスでは3カウントとなった。