『照葉樹林文化とは何か 東アジアの森が生み出した文明』

佐々木高明 著
中公新書
ISBN978-4-12-101921-9
照葉樹林文化論についての現状でのまとめ。
照葉樹林文化を構成すると考えられる様々な文化的要素の紹介と(第一部)、照葉樹林文化論の学説史的な展開や展望(第二部)、及び、稲作を中心にしたいくつかの問題点についての討論(第三部)から成っていて、まとめとしては大体標準的なまとめ、という本か。
そうしたもので良ければ、読んでみても、という本。
根拠が書かれていないので、単純に素朴にみえるものを古いものと想定しているようにみえる、とか、縄文時代照葉樹林文化があったから(照葉樹林文化から発達した)稲作文化が弥生時代に急速に広まったのだ、としているのは、必要条件としてなら分かるけども、稲作そのものは縄文晩期に伝来しているのだから十分条件ではあり得ない(何故縄文晩期には広がらなかったのか、ということを説明できない)、とか、批判できる点もなくはないが、まとめとしてはこんなものだろう。神事などの宗教行事に用いられてきた木はすべて照葉樹である、と書かれている本を、松の内に薦めるというのもどうかという気もするが。
まとめとしてはおおよそ標準的で、悪くはない本。
まとめで良ければ、読んでみても、という本だろう。