『新書で入門 新しい太陽系』

渡部潤一
新潮新書
ISBN978-4-10-610238-7
太陽系の天体についての概説書的な読み物。
全体的には、新書レベルでは標準的な概説本、といったもので、興味があれば、読んでみても、という本か。
前半はやや概説書的、堅めで、後半の木星の章辺りから以降は読み物的でくだけた感じになるのは、全体としてのバランスが取れていない気もするし、前半が読み物的でないと入り難いだろうから、一つの欠点といって良いだろうが、太陽の後、内側の惑星から説明していって、最後に、何故冥王星が惑星から外されたのかという話になるのは、モチーフ的に巧くまとまっているので、構成としては相殺でプラスマイナスゼロ。
後は、特に述べておくことはない大体標準的な概説本だと考えて良いと思う。
そうしたもので良ければ、読んでみても、という本だろう。
以下メモ。
・月は、地球から受ける引力よりも太陽から受ける引力の方が大きい。
・金星が地球に接近する時は地球に同じ面を向けており、金星の自転が他の惑星と逆向きなのは、地球重力の影響がある。
・金星の太陽面通過を観測することは、かつては、地球と金星や太陽との距離を測るのに最も良い方法だと考えられていた。
・太陽光で暖められた小惑星は赤外線を放射するが、その反作用で軌道がずれていくため(ヤーコフスキー効果)、小惑星の動向を完全に予測することは難しい。
・ガニメデとカリストにある直線状にならんだクレーターの列は、木星潮汐力によって分裂した彗星等の破片群が衝突した跡だと考えられる。
土星等の環は、すぐに惑星に落ちてしまい寿命は数千万年くらいとされるので、土星の環は(天文学的に)最近できたとする説が有力である。