『生命誕生 地球史から読み解く新しい生命像』

中沢弘基 著
講談社現代新書
ISBN978-4-06-288262-0
地球上での生命誕生に関する著者の説を解説した本。
自説を説いたものだけにややエキセントリックでハイリスクだが、そうしたものでよければ、という本か。
生命誕生に関する最新の知見とか諸説のまとめとかを期待して読む本ではない。
著者の主張は、大体以下のようなものか。
・地球は単体としてみれば熱を放射してエントロピーが減少しており、地球における生命の誕生とその進化はエントロピーを減少させるために進んだ。
・初期の地球大気は窒素や二酸化炭素に富む酸化型であり、その環境下ではアミノ酸などが大量にできることはなかっただろう。
・いったん地球が冷え、海ができた後に、太陽系の変動によって後期重爆撃と呼ばれる大量の隕石降下が起こった。
・この隕石の海洋降下時に、隕石中の炭素と海水や窒素が反応して大量の有機分子が作られた。
・作られた有機分子のうち水溶性で粘土鉱物に親和的なものは、隕石から作られた粘土鉱物と一緒に海底に沈殿して、分解を逃れただろう。
・海底に沈殿して高温、高圧化に置かれた有機分子は、相互に脱水重合することによってより高分子となった。
・地下の高分子は、やがてプレートに運ばれてさらなる熱水にさらされたが、なんらかの小胞に囲まれた高分子はその環境を生き残ることができただろう。
生命や代謝の発生の前に、個体(小胞)の発生があったと考えられる。
おおむね、こうしたことが書かれた本。
私は、専門家でもないし、この説の妥当性についてはよく分からない。
それでよければ、というものだろう。