一般的にいって、女性器

というのは男性の目から見てグロテスクだとされることが多いように思うが、考えてみれば、これは少し妙なことのように思われる。
普通に考えて、動物のオスというものは、同じ種の(発情した)メスの女性器を見た時に性的に興奮するように進化するものではないのだろうか。ヒトのオスは、女性器を見て性的に興奮するようには進化してこなかったのか。
やはりモリスのいうように、直立歩行を始めた時に、見え難くなった臀部ではなく正面から見えるようになった乳房が、オスの性的興奮を誘うものになったのだろうか。
(ヒトの赤ちゃんは生後すぐに立ち上がることはできないくらい未発達の状態で産まれてくるので(でなければ巨大化した脳が産道を通らなくなる)、造乳機能強化のためにより大きな乳房が必要になったのではないか、とも考えたが、サルやチンパンジーの授乳期間も数年に及ぶそうなので別にヒトの授乳期間が長い訳ではなく、乳房に蓄えられた脂肪が直接母乳の素になる訳でもないので、女性の大きな乳房が機能的に求められたということはないだろう)
乳房が大きくなるのは、発情期でなく妊娠・授乳期にいることのサインなので、性的にオスを誘うしるしにはならないという意見もあるが、よく分からない。ヒトに何故発情期がなくなったのか分からないし、何故女性器とは別のしるしが必要になったのかも分からないからである。
直立歩行によって見え難くなったといっても、そこまでヒトのオスの観察力が散漫だとは思えないし、チンパンジーのメスは発情すると女性器を見せてオスを誘うらしいから、ヒトのメスも女性器を見せてオスを誘えば、少々見え難かろうが、ヒトのオスが女性器を見て興奮するので良かったのではないか。
発情期を捨てる直前のヒトの祖先が何を発情のしるしにしていたか分からないので憶測になるが、ヒトは、発情のしるしを捨てた時、(発情した)女性器を見て性的に興奮することも捨てたのだろうか。
ヒトに何故発情期がなくなったかについては、発情期がなくなることによっていつでも繁殖が行えるようになり繁殖力が上がった、という説明があるが、私にはその根拠もよく分からない。現世人類の排卵は、チンパンジーとの大きな違いはなく、約一ヶ月周期なのだから、セックスによって排卵が誘発される場合もあるらしいとはいえ、メスが排卵期に合わせて発情していた方が、繁殖力は寧ろ高いのではないか。
ヒトの祖先は、高い繁殖力を犠牲にして、発情期を捨て、繁殖を目的としないセックスを多く行うようになったのであり、繁殖を目的としないセックスにおいては、メスが妊娠・授乳期にいることのサインは、性的興奮を促すのに何の妨げにもならなかったのではないだろうか。