『ルネサンス再入門 複数形の文化』

澤井繁男 著
平凡社新書
ISBN978-4-582-85859-4
ルネサンスには近代的要素と中世的要素とが平行して存在していた、ということが書かれた本。
実証主義的ではなく思弁的な本だが、それでよければそうしたもの、という本か。興味があるなら読んでみても、というところ。
ただ、ルネサンスについてある程度の知識は必要なのではないかと思う。
著者の主張はそれなりに分かるが、全体的な位置付けは、私にはよく分からなかった。
具体的には、錬金術や魔術がルネサンスの不可分な要素であったのか、とか、それらを近代科学の前駆として捉えるなら一方的に中世的要素と考えていいものかどうか、とか、近代的要素と中世的要素との関係、とか。
それでも、それなりには面白い。
興味があるなら読んでみても、という本だろう。

以下メモ。
・ペトラルカが歴史を発見した。それは、現在を直視するボッカッチョの視線とあいまって、来世に生きる中世的円環的歴史観からの脱却を促した。
・ただし、ルネサンスが発見し再生しようとしたのは古代ギリシャ・ローマ的な文明であり、そこには物質と霊魂とが混在していた。