『現代暗号入門 いかにして秘密は守られるのか』

神永正博 著
講談社ブルーバックス
ISBN978-4-06-502035-7
暗号について書かれた本。
入門というほど簡単ではないが、現代の暗号技術全般について軽くまとめられているので、そうした面での需要はあると思う。それでよければ、という本か。
例えば、ビットコインハッシュ関数については詳しく知っている人が、他の暗号について知りたい場合とか。
暗号について何も知らない人が本書から入るのは、無理があるんじゃないかと思う。
広く扱おうとすれば個々の説明はどうしてもなおざりになってしまうわけで、これはこれで、そういう本だということだろう。
それでよければ、読んでみてもいい本だろう。

以下メモ。
ハッシュ関数は、任意の長さのデータから一定の長さのデータを作る関数で、出力されたハッシュ値から元のデータを推定できないこと、元のデータが少し変わっただけでハッシュ値が大きく変わること、といった特徴を持つものが設計される。
楕円曲線上の二つの点を考えたとき、この二つの点を通る直線ともう一度交わる楕円曲線上の点をx軸について折り返した点を、この二つの点の和とする。
二つの点が同じ場合、この点と楕円曲線との接線がもう一度交わる場所を求め、和とする。こうして最初から次々に足していったものを、スカラー倍という。
楕円曲線素数で割った余りの集合である素体などの有限体上で考えると、スカラー倍、Q=mPを計算することは簡単にできるが、QとPからmを求めるのは難しい。
QとPを公開鍵ややり取りするデータ、mを秘密鍵になるようにうまく設計すれば、楕円曲線暗号ができる。
・こうした楕円曲線上の離散対数問題や、素因数分解のほかに、最短ベクトル探索問題が次世代暗号の候補として考えられている。