『混浴と日本史』

下川耿史
ちくま文庫
ISBN978-4-480-43448-7
日本の混浴事情を探った歴史民俗学の本。
大和岩雄とか古くは中山太郎系の歴史民俗学の本で、それなりの本ではあるだろう。混浴の事情が知りたければ読んでみても、という本。
ただ、こういうのは圧倒的な博覧強記ぶりで読者を伸していくものだと思うが、そこまでのパワーはないか。
それなりの本ではあるので、興味があれば、という本だろう。

以下メモ。
イザナギが黄泉の国から逃げ帰った後に禊をして天照大神などを産むが、これは要するに混浴して子どもができたということだろう。
新村出折口信夫は斎の意味のユから湯になったと説くが、お湯が温泉から自然に湧き出るものであることを考えれば、そのようなものに対する言葉が後にできたとは想像しにくく、むしろ湯から斎になったのではないか。
東大寺興福寺といった大寺院では人々に風呂を提供することが布教の手段として使われた。光明皇后の千人施浴の伝承から見ても、混浴だったのではないだろうか。
・後に寺院が乱立するようになると、寺はお百度参りや三十三ヶ所巡りを流行らせて生き残りを図るが、西国三十三所は温泉などの観光名所とセットになっていた。