『院政とは何だったか 「権門体制論」を見直す』

岡野友彦 著
PHP新書
ISBN978-4-569-81065-2
権門体制論について書かれた本。
一応院政に関する記述が主ではあるが、それは権門体制の極北として院政が語られているからなので、権門体制論についての本だと考えておいた方がいい。一般向けに書かれた権門体制論の本でよければ、読んでみても、という本か。
ぶっちゃけ権門体制論そのものが面白いのか、という問題はあるが、一つの解説ではあるだろう。
権門体制論はスタティックで動因論を含んでいないから、歴史論としては魅力がないのだということがよく分かる本ではあった。
内容を一文でいえば、公地公民、公的官僚の頂点としての天皇ではなく、より私的な、荘園領主、家政のトップとして、治天の君院政が求められた、というところだろうか。
権門体制論が書かれた本としては、一つの本。
そうしたものでよければ、という本だろう。

以下メモ。
鳥羽院政期に集積された八条院領荘園群と、長講堂領など後白河が集めた荘園は、皇位継承の思惑から別々に相伝され、両者を所有して大きな財力を得た後鳥羽院が幕府に敵対して敗れたことから、長講堂領が後深草院八条院領は亀山院の所有するところとなり、持明院統大覚寺統の分裂が起こった。