『魏志倭人伝の謎を解く 三国志から見る邪馬台国』

渡邉義浩 著
中公新書
ISBN978-4-12-102164-9
三国志全体の成り立ちや陳寿の政治的立ち位置から、倭人伝を解釈した本。
内容的には要するに、司馬懿公孫淵を滅ぼすことで倭が朝貢してきたので、司馬一族を顕彰するために倭は好意的に、強大に描かれている、陳寿西晋の中で討呉推進派の面々に近かったこともあり、倭を孫呉の後背地、会稽東冶の東に置いている、魏志倭人伝に見える南方的要素はその理念的な存在位置から要請されたものであり、邪馬台国大和説の弱点とはならない、というところ。
そうしたものでよければ、読んでみても、という本か。
あまり特別なものとも思わなかったが、こうした史料批判はそれはそれとして必要なものではあるから、悪い本だとはいえないだろう。
後は興味があればというところ。
そうしたものでよければ、読んでみてもという本だろう。

以下メモ。
・伊都国に置かれた(一)大卒は刺史のようだと書かれているが、刺史は地方の長官であり洛陽や長安のある地域は司隷校尉に属したので、伊都国は女王国とは離れた位置にあっただろう。
邪馬台国がこのように好意的に扱われている裏には、帯方郡の存在や、その意図を正しく解釈して適宜に使者を派遣した者たちの努力があったに違いない。