『池田屋事件の研究』

中村武生 著
講談社現代新書
ISBN978-4-06-288131-9
池田屋事件に関して参加者など長州側から調べた本。
面白いことは面白いが、一言でいえば細かい。新書レベルではちょっとどうかというような細かな事例研究。事例研究でよければ、読んでみても、という本か。
島津久光に対する評価などややエキセントリックな部分もあるが、事例研究でよければ、悪くはない本だろう。
久光に対する評価は、久光のくせに生意気だみたいな、高いのか低いのかよく分からないものだが、久光反対派の急先鋒である西郷隆盛の久光評価を論拠に据えるのはどうかと思う。
後はおおむね普通の事例研究。興味がある人にはいいだろうが、一般向けにはやや細かすぎるのではないだろうか。
そうした事例研究でよければ読んでみてもという本だろう。

以下メモ。
八月十八日の政変後の長州勢は、七卿や藩主父子の返り咲きを求めて、京内でテロ活動を行っていた。
池田屋事件の引き金となった古高俊太郎の逮捕も、テロ活動とその取締りの一環である。
池田屋事件は、会津と長州の直接対立の始まりであった。
桂小五郎は遅刻したと自分では書いているが、同役(京都留守居役)であった乃美の手記によれば、池田屋内にいて辛くも逃げ出したという。