『戦国誕生 中世日本が終焉するとき』

渡邊大門 著
講談社現代新書
ISBN978-4-06-288106-7
十五世紀後半の室町幕府を中心とした政治状況を描いた本。
そうしたもの、といえばそうしたものだが、テーマ的にあまりすっきりせず、特によい本だとは思えなかった。
のである、を多用する文体は、読み取れないとまではいわないものの捉えにくく、論旨が分かりにくい。論理的に考えられていないから文章が悪いのか、文章が拙いから論旨が捉えにくいのか、著者の主張したいことが私にはあまりよく分からなかった。
最近の新書はライターがかかわっていて日本語的には読みやすいものが多いのに、本書はかかわっていないのか。一昔前には多かった文章の下手な著者が書いた新書を読んでいる感じ。
例えば本書では基本的に足利義政を無能とこき下ろしているのだが、無能であることを示す描写がないなど、論理的に巧くできていないと思う。義政が当時の政治状況を巧みにコントロールできなかったことは事実だろうが、義政が無能であったというには、論理的には、有能であればコントロールできたことを示さなければならないだろう。むしろ、本書の記述からは、必死になってなんとかしようとがんばっている義政の姿が浮かび上がる。
当時の政治状況を雑多に描いたもの、といえばそうだが、それ以外に何かあるわけでもない。
あまりよい本ではないと思う。
特に、という本ではないだろう。

以下メモ。
・十五世紀後半には、多くの公家が在京せず、領地のある地方に下向した。そのため、朝廷では朝儀が開けず、儀礼などの伝統の継承が難しくなった。
 また、即位の儀などお金のかかる儀礼もできなかった。
・十五世紀後半には、尼子氏や浦上氏などの有力守護代も、まだ名目上は京極氏、赤松氏などの守護の血筋を必要としていた。朝倉孝景越前国守護職を目指したようだが、どこまで成功したのかははっきりしない。