『モーツァルトを「造った」男 ケッヘルと同時代のウィーン』

小宮正安 著
講談社現代新書
ISBN978-4-06-288096-1
ケッヘルと彼が生きた時代に関して書かれた本。
マイナーな時代のマイナーな人物に焦点を当ててみました、という本で、それなりの本だとは思うが、どこまでもマイナー。
特別でもないが悪くもなく。そうしたもので良ければ、という本か。
悪くないというのは現実にはなかなかたいしたものではないかという気もするが、では良かったのかというと、特別なものはあまりない。
あくまで、マイナーで良ければ、というところ。
そうしたもので良ければ、読んでみても、という本だろう。

以下メモ。
国民国家の時代にあっても多民族多言語国家であるオーストリア帝国ではドイツ的なもののみを前面に押すことはできなかった。大ドイツ主義と小ドイツ主義の衝突もしかりである。
・後にオーストリア編入されたザルツブルク出身のモーツァルトは、十分にオーストリアに近く、そしてオーストリアに近すぎない大作曲家だった。
 モーツァルトを顕彰する場合には、その普遍性が語られた。
モーツァルトを持ち上げることは、ベートーヴェンを至高のものとする新ドイツ楽派に対する牽制にもなった。
・ケッヘルによるモーツァルトの作品目録は年代別ジャンル別に編纂されているが、教会音楽を先頭に声楽曲、ピアノ曲室内楽曲、管弦楽曲という順番になっている点、伝統重視の現れである。