『谷干城 憂国の明治人』

小林和幸 著
中公新書
ISBN978-4-12-102103-8
谷干城についての小伝。
多分谷贔屓ではあるのだろうが、新書レベルの伝記としては普通の伝記か。興味があるのなら読んでみても、という本。
おそらくは過度に谷贔屓であるだろうこと、谷の生涯の中心となる明治後半の貴族院議員としての活躍が、華々しくもなく個人的にはそんなに楽しめるものでもなかったこと、幕末や明治の歴史について一通りの前提知識がいるだろうこと、から、特に薦めるほどのものではない。
征韓論についての谷の主張を、国内統一のために外敵を求めたもの、と擁護しているのは、国内の不満をそらすために対外侵略を行う例がどれだけあるかを鑑みれば、あまり擁護にはなっていないと思う。
後は、そうしたものなので、それでも良ければ、という本。
そうしたもので良ければ読んでみても、という本だろう。

以下メモ。
・谷家は儒家であったため、他姓からの養子を取らず、他姓への養子縁組も認めなかった。
・谷は、江戸城無血開城を、江戸を強襲すれば戦いはそこで終わったのであり、長引く戊辰戦争の元凶になったと非難する。
・谷は維新後、武士出身の兵士が封建的な上下関係に耽溺するのを見て、徴兵制による国民皆兵を望んだ。西南戦争は、自身が育てた兵と封建的な薩兵との戦いであり、負けるわけにはいかなかった。