『生命はなぜ生まれたのか 地球生物の起源の謎に迫る』

高井研 著
幻冬舎新書
ISBN978-4-344-98198-0
地球生命の誕生について書かれた本。
基本的に、著者が表に出すぎて、うざい。
それに耐えられる人、その方が面白いという人向けの本か。人を選ぶ本だと思う。
私としては、この分野についての最新の動向を知ることができたのでそれなりに面白かったが、深い説明はないのでその点でやや物足りず、うざいので人に薦めるほどではない、というところ。
著者が表に出てくるのは、著者の主観的には、軽くて読みやすい本にするためなのだろうが。
が、しかし、という感じ。
序にいえば、生命の発生そのものも軽く捉えすぎているようにも思うし。
それでも良ければ読んでみても、という本だろう。

以下メモ。
・星間塵の中で化学進化は起こるようだ。星間塵の中だと、中性子星からのシンクロトロン放射の円偏光や、ベータ崩壊時(超新星爆発において発生吸収された中性子によって引き起こされる)の対称性の破れによって、L型アミノ酸過剰の問題がクリアできる、という利点がある。
・DNAを使う生物の前にRNAを使う生物がいた、という説は広く受け入れられているが、RNAが合成されるような環境ならDNAもタンパク質も合成されるだろうから、RNAだけを使う生物がいなければならない必然性は薄い、と著者は考えている。
・原始の地球における深海熱水活動域では、高分子有機物の濃縮が進み、おそらく多くの有機物発酵生物が生まれたことだろう。ただし、有機物発酵生物は、発酵できる有機物が尽きてしまえば、それで死に絶える。
・深海熱水活動域には金属硫化鉱物が大量に存在するが、その表面では、理論上、二酸化炭素からメタンを発生させて、チオエステルやATPを作る有機化学反応が可能である。
・エネルギー代謝にかかわる多くの酵素の活性中心には、鉄やニッケルと硫黄のクラスター構造があり、初期の生命がこの構造を取り込んだことが考えられる。
・原始深海熱水活動域で誕生した有機物発酵生物が、金属硫化鉱物表面で起こっていた有機化学反応を取り込んだとき、一次生産が可能な持続的な生命が誕生した。