『徴税権力 国税庁の研究』

落合博実 著
文春文庫
ISBN978-4-16-776601-6
国税庁を長年担当してきた記者が国税庁の税務調査姿勢について書いた本。
税務調査一般、というのではなく、国税当局が有力な納税者に対してどのように取り組んできたか、というよりは、取り組んでこなかったのか、ということが書かれた本。
そうしたものなので、そうしたもので良ければ、という本か。
ただし、特別に、驚愕の、とまでいう程の内容でもないとは思う。政治資金は無税なので政治家がそれを個人用に流用しても甘いとか、経理のしっかりしている大企業を包括的に調べるのは労力がかかるので甘くなっているとか、フリージャーナリストが財務省国税当局を批判すると調査官が税務調査にやってくるとか、公明党が与党である内は創価学会への調査は甘くなるだろう、とか、なるほどとは思うし、面白くない訳ではないが。
元は週刊文春の掲載記事みたいなので、余り週刊誌の記事以上のものは期待できない、と考えておいて間違いないだろう。
それで良ければ、というところ。
そうしたもので良ければ、読んでみても、という本だろう。

以下メモ。
・査察では愛人がいない場合は失敗すると言われる(ほど、脱税したお金は愛人に使われることが多い)。
・大資産家、政治家、芸能人やスポーツ選手のような大物は、資料調査課(リョウチョウ)がマークしている。資料調査課には、査察部(マルサ)のような強制捜査権はなく、強引な調査が反発を受けることもある。
・査察は、刑事罰を与えることが目的なので、取調べを受ける方には黙秘権がある。調査部の調査は、あくまで任意であるが、課税することが目的なので、黙秘をすれば課税されて終わる。