『チンパンジー ことばのない彼らが語ること』

中村美知夫 著
中公新書
ISBN978-4-12-101997-4
チンパンジー学についていくつかのことが書かれた本。
内容としては、人間に近いというチンパンジーの一般的なイメージに反駁したり、霊長類学に批判的なことをいったり、チンパンジーの生態について書いたりした本、ではあるが、逆にいえば、チンパンジーの一般的な理解に異議を申し立てたものでも、霊長類学を批判したものでも、チンパンジーの生態を紹介した本でもない。
要するに本を余り書き慣れていない作者があれこれと書きたいことを書き連ねていったら、収拾がつかなくなった、という感じの本。あれもこれもと書こうとしても、あれでもないしこれでもないという本にしかならないのである。
前述の中のどれか、といったら、多分、霊長類学に関する著者なりの違和感を表明したもの、と考えておくのが、最も妥当だろうか。チンパンジーについてある程度知っていて、著者の問題意識を共有できるレベルにある人なら、面白く感じるのかもしれない。
しかし一般向けには厳しいと思う。もう少し、一般向けに楽しいトピックスかエピソードか、あるいはテーマがないと、一般の読者が求めるようなものにはならない。
広く、一般向けに薦めるような本ではないだろう。