『捕虜 捕らえられた日本兵たちのその後』

大谷敬二郎 著
光人社NF文庫
ISBN978-4-7698-2602-6
第二次世界大戦における日本兵の捕虜に関して書かれた本。
内容としては、捕虜に関して書かれた、としか言いようはないが、かなり雑多で総花的な概説。日中戦争や太平洋戦争のおおよその経過、敗戦後における各地残存部隊の投降の経緯、シベリア抑留に対する非難、が本書の半分以上を占めているが、それらは、捕虜に関係がないとはいえないものの、現実には他の本で十分知りうる内容ではないかと思う。
著者としては、強いものにおもねって弱いものに威張り散らす日本兵捕虜の事大主義的な傾向を問題にしたかったようだが、テーマと見るには、余りに分量が少ない。
もう少し、何が書きたいのかをはっきりさせて、それに見合った構成を作らないと、一冊の本としては、苦しいのではないだろうか。
太平洋戦争の経過も知らないしシベリア抑留が何かも知らないが、日本兵の捕虜には興味がある、という人向けか。今の若い世代の人にはそういう人がいるのかもしれない。
そうしたもので良ければ、という本だが、内容的には、捕虜に関してあれこれと書き散らかした雑記で、特に本書でなければというようなものはないと思う。
取り立てて、薦めるような本ではないだろう。