『新しい薬をどう創るか 創薬研究の最前線』

京都大学大学院薬学研究科 編
講談社ブルーバックス
ISBN978-4-06-257541-6
新薬開発に関していくつかのことが書かれた本。
モチーフ的にも内容的にも、新薬開発への招待、という本で、手前味噌の自己称賛的な部分はあるが、読み物としては一応それなりの本か。
新薬開発に関するあれこれのことが書かれていて、雑学読み物としてはそこそこに興味深かったので、そうしたもので良ければ、読んでみても、という本ではないだろうか。
招待の割には、入門者向けにやさしい本ではないが、高校で生物や化学を勉強している人なら、特に難しいという程ではないだろう。
手前味噌だ、というのは、例えば、最初の方にメバロチンの開発物語が出てくるのが、スタチン系の薬は売り上げ世界一、とかの讃美ばかりで、ええええええええ、という感じではあるのだが、一つ思ったのは、組織の名前がクレジットされるようなアンソロジーだと、個々の著者が持つ反省や薬学全体への批判が、それを現すと自分の所属する組織への批判になってしまいかねず、避けられてしまうのではないだろうか。
だから、少々ナルシシスティックで気持ち悪い感じはあるが、読み物としてはそれなりだろうから、新薬の開発に興味があるならば、読んでみても、という本だろう。
ただし、招待だから都合の悪いことは書かないでしょ、というのは理解するとしても、薬学研究の道に本気で進むかもしれないと思っているような人は、都合の良いことばかりで騙される危険性は、あるかもしれず。
以下メモ。
・タンパク質の二次構造であるα−ヘリックス構造はアミノ酸がらせん状に並んでいるが、上(末端側)から見ると、7個毎のアミノ酸アミノ酸配列で1番目と8番目と15番目…、2番目と9番目、…)が、ほぼ同じ位置にくる。片側に親水性アミノ酸、反対側に疎水性アミノ酸が集まるようなアミノ酸配列を持つペプチドは、水にも油にも親和性のある両親媒性ヘリックスとなる。
・ガン組織は正常組織より血管壁が粗く、大きな物質が通り抜けられるので、抗ガン剤をポリエチレングリコール等でコーティングして大きな分子にすると、ガン細胞を選択的に攻撃できる。
また、大きな分子は腎臓でろ過され難く、ポリエチレングリコールでコーディングすると貪食細胞に察知され難くなるので、体内に長い時間留まることができる。