『視聴率の正しい使い方』

藤平芳紀 著
朝日新書
ISBN978-4-02-273142-5
視聴率に関していろいろなことが書かれた本。
一応、視聴率が本当はどのようなものであるのか、というモチーフがあることはあるのだろうが、全体としては、視聴率に関しての雑学読み物、と考えておけば良い本か。
私は余り積極的には支持しないが、雑学読み物としてはこんなものではあるだろうから、そうしたもので良ければ、読んでみても、という本。
積極的には支持しないというのは、問題点が二つあって、一つは、雨の日や日曜は家に居ることが多いので視聴率が高い、とかの視聴率に関する雑学が書かれた部分が、本当に、雑学の細切れにしか過ぎないこと。そうだとは書かれていないが、新聞の小さな囲み記事の連載をまとめたような感じ。一冊の本としては、余りにもぶつ切りに過ぎるのではないだろうか。
もう一つは、モチーフに関することで、昔偏差値批判に対する批判というのがあって、偏差値がけしからんという意見に対しては、偏差値なんてただの統計数字ではないか、という批判があった訳だが、本書における視聴率批判に対する再批判というのが、要するにそれに当たらずといえども遠からずというものであるように、私には思われること。今日振り返ってみれば、偏差値批判というのはいってみれば学歴社会批判であった訳で、それに対して、偏差値なんてただの統計数字である、と反論するのは、その限りではどんなに正しいのだとしても、結局は、完全に政治的な立言にしか、なっていなかったのではないだろうか。そういう歴史を知っている身としては、本書のような批判は、ひいてしまうというか、燃えるものではなかったし、余り面白く意義のあるものだとも思えなかった。
しかし、これはこちらの方が悪いかもしれないので、雑学読み物としては、こんなものではあるのだろう、というところか。
そうしたもので良ければ、読んでみても、という本だろう。
以下メモ。
・視聴率の調査対象世帯に複数台のテレビがあって違う局の番組を同時に流している時、世帯視聴率はそれぞれカウントされる(同じ家の複数のテレビが同じ局を流していても、カウントは一つである)。
 視聴率1%で100万人が見たことになる、というような計算は正しくない。
・サッカーの試合では、CMが多いハーフタイムに視聴率が下がるので、一試合トータルの平均視聴率にすると視聴率が低く出る。NHKではハーフタイムにニュースを挟んで前後半を別番組にしたりするが、民放では、CM販売上の制約があって、一番組にしかできないらしい。
・放送の多局化が進めば、一局あたりの視聴率が減るだろうから、各番組の視聴率の差が標本誤差の範囲に殆ど収まってしまうような事態も考えられる。