『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』

松永和紀
光文社新書
ISBN978-4-334-033398-9
食品の安全性や健康情報等に関して、それを取り上げるマスメディアのゆがみについていつくかのことが書かれた本。
健康情報を取り上げるマスコミの歪みについてというか、マスコミが歪んで取り上げた健康情報についてというか、特にこれといったテーマはないので、それらの事柄に関する様々な事例を集めた雑学本、と考えておくべき本か。
(私を含めて)こういうのが好きな人には、それなりに楽しめるだろうから、そうしたもので良ければ読んでみても、というもの。
余り具体性のない、反論のための反論になっている箇所がままあるような気がするので、反対者には意義はないかもしれない。
(例えば、コンビニが保存料のソルビン酸を追放してどう悪くなったのか、ということについては、具体的な数値が出てこないし、農薬を使わないと植物が自衛のために防御物質を作る、という話も、有機食品が通常の食品に比べてより安全とかより栄養があるという科学的な根拠はない、というのが結論では、反論のための反論にしかなっていないのではなかろうか、と、シュウ酸カルシウムによる尿路結石で苦しんだ私が書いてみる(シュウ酸は植物由来のものよりも人間の体内で作られる量の方が多いらしいが))
後、『ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』はアメリカの雑誌だ。イングランドだからイギリス、という発想なのだろうか。西インド諸島アメリカの近くにある訳だが、と、北広島市が北海道にあることを知らなかった私がこれまた書いてみる。
全体としては、特に悪くもないが格別に素晴らしくもない本。雑学本としてはそれなりだろうから、そういうもので良ければ読んでみても、という本だろう。
メモ1点。
・基本的にメディアでは悪いニュースこそがニュースになるが、安全と報道して後で危険と分かれば非難される可能性が高いものの、危険と報道して後で安全だと分かった場合に非難されることは少なく、また、多数の専門家が反対していたとしても、1人の研究者が危険だといえば、メディアは免責され得ることも手伝って、警鐘報道が増える。