『性犯罪者から子どもを守る メーガン法の可能性』

松井茂記
中公新書
ISBN978-4-12-101888-5
メーガン法について、その内容や合憲性の当否等の法学的な事柄が書かれた本。
推進派の法学者が、メーガン法の紹介やメーガン法を合憲とする論理を記したもので、そういうもので良ければ、読んでみても、という本か。
アメリカにおいて具体的にどのような点で合憲かどうかが争われたのか、を知ることができたので、私としてはそれなりに面白かった。
ちなみに基本的な戦略としては、メーガン法が義務付ける登録や告知は処罰ではない、処罰ではないのだから、憲法が刑罰に関して課している制限は総てクリアできる、という感じか(合衆国最高裁判所でこの筋に沿った判決が出ているらしい)。
(なお、日本における合憲性に関して、著者は、プライバシー権、平等権の侵害については、立法の目的や法律上の手段が合理的ならば認められるので、メーガン法は認められる、としているが、一方で、性犯罪者の再犯率が本当に高いかどうかは議論があってはっきりしておらず、メーガン法はリスクマネジメントの観点から正当化され得る、としているのは、その程度のものを合理的として良いのかどうか、私には分かりかねる)
欠点としては、意見等を紹介するのに、誰がそれをいっているのかを書かないで、ある評者、とのみ記してあることが多いのは、問題があるかもしれない。ある程度法学の基礎知識がないと面白くないだろう、という気もするが、これは、そういう本だから、ということなのだろうか。法学を全く知らない人がメーガン法の紹介というだけで飛び付くと、間違うかもしれない。
全体的には、法学的な事柄が書かれたもので良ければ、特別という程ではないが、そう悪いこともない本。
興味があるのならば、読んでみても、という本だろう。
メモ1点。
アメリカでは、犯罪を定義し犯罪者に処罰を科す権限は州にあり、また連邦議会は州に法律制定を義務付けることはできないので、連邦メーガン法では、性犯罪者の登録制度や登録情報の公表を行う法律の制定を州に求め、それがなされない場合には連邦からの補助金を削除する規定になっている。