『真説 鉄砲伝来』

宇田川武久 著
平凡社新書
ISBN4-582-85346-3
戦国時代の日本における鉄砲の伝播浸透状況について書かれた本。
主軸としては、武芸である炮術の秘伝書を紐解いて、秘伝書が物語る戦国期日本の鉄砲の伝播状況を明らかにしようとした本だが、文章のせいなのか本当に論理性が欠けているせいなのか、論理的な道筋というものが余り感じられず、著者が何をいいたかったのかという本書全体のストーリーが、私にはまるで飲み込めなかった。
(文章がおかしいという感じは余り受けないが、おかしなところは確かにある。例えば、「国王は降倭を殺害することの無益をくりかえし」と書いてあるのは、文脈上、繰り返し説いた、ということだと思うが、これでは意味が反対になってしまう)
全体として何がいいたかったのかよく分からないし、結論はあとがきにまとめて書いてあるが、どこをどう論証したつもりでそういう結論を導き出しているのか私には余りよく分からず、説得力が不十分であるように思われる。
私は、うだうだと論理展開のはっきりしない本は好きではないので、本書が良い本だとは思わない。
良くいえば、秘伝書の実際の内容とか、それなりに面白い部分もあるので、戦国時代が好きでその雰囲気にひたるだけで良いという人なら、読んでみる手はあるかもしれない、というところか。私としては薦める程のものではなかった。