『光化学の驚異 日本がリードする「次世代技術」の最前線』

光化学協会 編
講談社ブルーバックス
ISBN4-06-257527-2
光化学に関しての研究成果が紹介されたアンソロジー
どちらかといえば、光化学そのものというより、光化学を使った応用工学、という面が強いが、別に悪い本ではないので、そうしたものが概説された雑学本としてなら、読んでみたければ読んでみても、という本か。
個人的な好みとしては、全体的にほぼ概略しか書かれていないので、もう少し深く掘り下げたものを、別々の本として読みたかった、という気はしたし、ブルーバックスとしては必ずしも難しい訳ではないものの、雑学本としてはやや難しめのように思うが、そんなことをいってもしょうがないといえばしょうがないか。
こういう本で良ければ読んでみても、という本。特に悪いということはないので、概略が書かれた雑学本で良ければ、読める本だと思う。
以下メモ。
・光化学反応の一つに、シス体とトランス体間の二重結合の回転を促すものがある。二重結合が複数連なっていると、より波長の長い可視光を吸収する。桿体細胞の中には、11−シス−レチナールがあって、光を受けるとこれが全トランス型に異性化し、立体構造が変化することで、光を受けたという情報を伝達する。
クロロフィルに光が当たると、他の分子に電子を与えやすくなる。光合成はこれを利用して行われるが、励起状態の色素分子が長い間放っておかれると、周囲の酸素分子と反応して、有害な活性酸素種が発生することになる。増殖が早い癌細胞にクロロフィルに類似した分子を選択的に取り込ませて、光を照射し、発生した活性酸素種で癌細胞を破壊する研究が行われている。
・微粒子に光が当たった時、光は屈折によって曲げられるが、曲がった分の運動量は、反作用によって微粒子に与えられる。微粒子の屈折率が周囲の溶液の屈折率より大きい場合、反作用の総和は光の焦点方向に向かうので、微粒子は光の焦点付近に引き寄せられることになる。このようにして、レーザー光を使って、微粒子を補足することができる(光ピンセット)。