『憲兵 元・東部憲兵隊司令官の自伝的回想』

大谷敬二郎 著
光人社NF文庫
ISBN4-7698-2499-8
憲兵による回想雑録。
全体的には、割と細かいというか枝葉末節の、どうでもいいといえばどうでもいいことが多く書かれた本ではあるが、回想なんていうのは比較的そういうものだろうし、私的な回想で良ければ、まずまずこんなもの、という本か。そう特別なものでもないが、光人社NF文庫を読んでみようという程の人で、興味があるのならば、悪くはない本ではないかと思う。
良い点としては、一冊がまるまる憲兵時代の回想にあてられているのは、充実しているとはいえる。憲兵に対しての自己弁護もなされているが、どうもその弁護が成功しているようにはとても思えない点も、ご愛敬か。往時の軍人的思考の一端が垣間見れるという点で、面白かった。
私的回想という以上のものでもないので、特別なものでもないが、興味があって読んでみたいというのなら、悪くはない本だと思う。
以下メモ。
満州事変において関東軍が「厳重処分」の名の元に行った即時の現地処刑が、その後の日本軍の残虐行為の源になったのではないか。
三国同盟が協議されていた頃、陸軍の支援の元に同盟賛成派から盛り上がった排英運動は、英米自由主義思想を排斥する攘夷運動を、その思想的バックボーンにしていた。
憲兵の任務は軍を監察することにあるとはいいながら、人事権を握る軍の上層部を監察することは、所詮かなわなかった。