『戦闘美少女の精神分析』

斎藤環
ちくま文庫
ISBN4-480-42216-1
著者によるアニメ評論。
基本的には、ラカン派に属するらしい、何言ってっかさっぱりわっからない系の評論。
ファリック・ガールのヒステリー化、とか。ラカンにおいてはヒステリーに特殊な位置付けがなされているらしいから、それを踏まえれば分かる、かどうかは知らないが。
だから、ファリック・ガールのヒステリー化、で分かる人向け。そういう人だけ勝手に読んでいて下さい、という本か。
私には、余りよく分からなかったし、理解できた部分についていえば、それらを説得力のある論理構造として捉えることは、できなかった。
理解すれば論理構造があるのかもしれないが、実際にも、著者の言説を論証したり基礎付けたりするような部分は殆ど存在しないので、要するにこの本の主張が単なる思い付きレベルだからではないか、と私は疑う。
もう一ついうと、第一章と第六章を本論とすれば、二〜五章は補論であり、結局、本論の貧弱さに比べて脚注ばかりが立派、という感じがする。
と、いうことで、一冊の本として、成功している本だとはいえないだろう。
特に薦める程ではないと思う。
以下、個人的で勝手なメモ書き。
・おたくと非おたくとを分ける分水嶺は、アニメキャラで抜けるかどうかである。
・虚構であるアニメが、現実の模倣としてではなく虚構そのままでリアリティを獲得するために、性が使われる。
(この両者、前半では性の虚構性が前提となっているのに、後半においては性の現実性が前提とされているが、性対象は自身にとって所詮虚構でも、性欲は自身の内にある現実だ、ということなのだろうか)