『予告されていたペリー来航と幕末情報戦争』

岩下哲典 著
洋泉社・新書y
ISBN4-86248-028-4
オランダから通告されたペリー来航の予告情報を巡る動向について書かれた本。
大体の感じとしては、歴史の一断面を切り取って素描してみせた、という本で、だから、幕末の歴史についてある程度知っている人には、それなりに面白い本だろう。本書一冊でどうこう、という程のテーマや内容は、ないと思う。
それで良ければ読んでみても、という本か。
粗筋的には、予告情報を重大視しない幕府官吏の態度に業を煮やした阿部正弘が情報を雄藩にリークした、というところで、欠点として、阿部正弘が主体的にそれを行った、という根拠は弱いということが挙げられるが、後は、可もなく不可もなく、といったところではないだろうか。
そう特別ということはないが、悪いということもない。興味があれば、読んでみても、という本だと思う。
以下メモ。
・「泰平のねむりをさますじょうきせん」の狂歌は、『藤岡屋日記』には類似の歌が載るものの同じ歌はなく、後世に創られたものである可能性がある。
・ペリー側は、自艦に白旗が上がっていたら、日本側が訪ねてきても良い、と伝えたのであって、日本側が白旗を上げて訪ねて来い、といったのではない。
・ペリー来航の予告情報を重視した島津藩では、類焼した品川屋敷に代えて、江戸湾から離れた中渋谷に下屋敷を建設した。