『ドキュメント 精神鑑定』

林幸司 著
洋泉社:新書y
ISBN4-86248-008-X
精神鑑定についての入門的な読み物。
ケーススタディを中心に、精神鑑定の進め方やその法的根拠等が書かれたもので、特に優れたという程ではないが、入門読み物としては、まずまずこんなもの、という本か。
興味があるならば、読んでみても、というところではないかと思う。
ごく標準的な入門読み物なので、他には特に記しておくようなことは余りない。
問題点として、ケーススタディに関して、予め被鑑定人に対して病名を措定して、それに基づいてエピソードを集めて犯罪前後の状況を構築し、更に、その状況だから、被鑑定人はこれこれの病気である、という予定調和的な説明をしていないか、という疑念はすぐに思い浮かび、それを覆す程の厚みのある事例研究にはなっていないように思うが、このような批判が適切であるかどうかは、よく分からない。
入門読み物としては、こんなものではないだろうか。興味があるのなら、読んでみても良い本だと思う。
以下メモ。
・精神鑑定とは大体のところ臨床診断であり、精神障害が診断されれば、それに伴って、統合失調症なら心神喪失、妄想性障害なら心神耗弱、妄想性人格障害なら責任能力あり、というような基礎的な判断がなされ、他の要素も総合して、責任能力が判定される。
・証人尋問で厳しく追求されるので、鑑定人のなり手は少ない。