『日本の文化ナショナリズム』

鈴木貞美
平凡社新書
ISBN4-582-85303-X
近代日本における、文化史及び文化史研究史について書かれた本。
余りテーマやまとまりはなく、大体のところ、とりとめのないことがうだうだぐだぐだと書かれたいつものよくある人文学系の書、と考えておけば良い本か。
よくあるタイプの本なので、こういうのが好きな人には面白いのかもしれない。
敢えて、テーマというか結論というか、寧ろ問題提起をいえば、日本のナショナリズムアジア主義と密接な関係があった、というのが、中心的なものになるのだろうか。
所々面白い指摘がなくもなかったので、こういうもので良ければ読んでみても、という本なのかもしれないが、ただし、文化史概説という面も含むためか、全体が殆ど細切れの集合体になっており、かといって雑学本として読むには難しい部分が結構多いので、私としては余り良い本ではないと思う。
薦めるには少し足りない、というところではないだろうか。
以下メモ。
・明治以前の日本の知識人は、知的なことを書く場合には漢文調を用い、情を書く場合には和文調を用いた。
・大正時代に入る頃から、宇宙の根本原理として生命を考える生命主義の考え方が広まり、やがて、その普遍的な生命を、日本の古神道天皇が最も良く体現し得るのだという特殊ナショナリスティックな考えが広まっていった。