『丸山眞男の時代 大学・知識人・ジャーナリズム』

竹内洋
中公新書
ISBN4-12-101820-6
丸山眞男と知識人社会との関連に関して、いくつかのことが書かれた本。
余り中心となるテーマはなく、大体のところは、あれこれのことがぐだぐだと書かれたよくある人文系読み物、と考えておけば良い本か。
(敢えていえば、戦後知識人の代表となった丸山は、そうなることで、自らが代表をすることはなかったがその一員ではあった戦前の知識人が、戦争とファシズムに荷担してきたことから目を逸らさせてきた、というのが、あるとすれば全体のテーマだろうか)
私としてはどうということもなかったが、ありそうな人文系読み物なので、こういうのが好きな人には多分面白いのだろう。
取り立てて何かがあるということはないが、殊更に駄目という程でもない本。結構厚めなので好きで読むのでなかったら大変だろうが、難しいようなところが殆どないのは評価できる。
別に薦めるのではないが、読んでみたければ読んでみても、というところだろう。
以下メモ。
日本共産党がそれまでの極左冒険主義を自己批判した1955年の六全協は、武装革命路線に忠実に従ってきた支持者に大きなショックを与えた。
・60年安保を主導した全学連の頃は、大学生はまだ一応エリート階層といえたが、大学進学率の上昇と共に大学生はエリートとはいえなくなり、全共闘による学園闘争は、こうしたエリートでなくなった大学生による異議申し立てだった。
もっとも、学園闘争の頃、大学生の異議申し立てを受けた大学教授たちはまだエリートだったが、すぐにその座からすべり落ちた。
・知識人は真理を述べるだけでなく、真理を述べるための覇権ゲームを行っている。