『<鬼子>たちの肖像 中国人が描いた日本人』

武田雅哉
中公新書
ISBN4-12-101815-X
清朝末期の画像メディアで日本や日本人がどのように描かれたか、ということについて書かれた本。
本としては特に大きな欠点がある訳ではなく、可もなく不可もなくといった感じのものだが、内容的には、要するにそれだけ、ではあり、私としては、これでは少し物足りないと思った。
敵を醜く描くのは古今東西変わらないね、という結論を導くためだけならば、日清戦争期の中国に絞った意味がないし、雑学本として読もうにも、範囲が狭すぎて苦しい。
本当に、清朝末期の画像メディアで日本がどのように描かれているか、ということだけに興味を持てるのならば、特別悪くはないので、読んでみても良いかもしれないが、普通は、そこに何らかの発見やテーマがあって初めて、一冊の本を世に問う意義がある訳で、前述のようなありきたりな結論を得るだけならば、そんなのは読まなくても分かるでしょ、ということにしかならないのではないだろうか。
つまり、他に読むべき本はいくらでもあるだろう、というありきたりな結論にならざるを得ないだろう。
メモ1点。
・中国では、人(中華人・文明人)ならぬ者は、足の関節がなくまっすぐである、という発想があるらしい。三跪九叩頭の礼を拒絶したイギリスの大使にそういう説明が使われたこともあるし、日本人も、一部ではそういう者だと考えられている向きもあった。映画に出てくるキョンシーがジャンプするのも、人ならぬ者だからだろう。