『御家騒動 大名家を揺るがした権力闘争』

福田千鶴
中公新書
ISBN4-12-101788-9
近世前半の色々な御家騒動が書かれた本。
下剋上も厭わなかった戦国時代的な主従関係から、御家を大事とする近世の伝統的固定的な主従関係への変化を背景的なモチーフとしながら、その過程にある近世前半に起きた様々な御家騒動を集めたもの。基本的には、御家騒動を数多く収集した雑学本、と捉えるのが、間違いがないだろうか。
それ以上の広がりや奥行きは余り期待すべきではないが、ただし、テーマという程ではないながらも、前述のように背景がある程度きっちりとしているので、結構分かりやすく読みやすくて、良い本なのではないかと思う。歴史好きで近世に興味があるなら、読んでみて良い本だろう。
以下、メモ。
・近世前半は、譜代大名の家臣団形成期であり、主家が滅んでも再就職先があった。
・慶長・元和・寛永期に家中騒動によって改易が行われた事例をみると、有力外様大名ではなく、大久保忠隣、本多正純松平忠輝松平忠直、徳川忠長といった一門や譜代大名が家中騒動を口実とした改易のターゲットとされており、大名統制というより幕府内部の権力争いの様相が強い。
・そもそもの幕府の方針は、家中騒動を公儀が取り扱うものではない私儀としていたが、寛永期の後半になると、主従制を絶対化して幕藩体制の安定が図られるようになり、寛永十七年(1640年)に決着した生駒騒動と池田騒動で両家共に改易となって、不和となった主従の双方に厳しい処置が取られるようになった。
・更に、綱吉が家中不和となっていた越後高田藩を改易にしたことで、家中騒動によって改易が行われるという図式ができあがった。