『脳・心・人工知能 数理で脳を解き明かす』

甘利俊一 著
講談社ブルーバックス
ISBN978-4-06-257968-1
脳の数理に関して著者の研究や考えを書いた本。
個人的にやや食い足りない気がしたが、詳細を書いても難解になるだけだろうから、これはこれでというところか。興味があるなら読んでみても、という本。
脳や人工知能について深く知りたい人は、もう少し専門的なものを最初から選んでもいいと思う。
また、自己顕示欲が強く少々エキセントリックでもある。
エキセントリックな人がみな優れた科学者だとはいえないが優れた科学者はたいていエキセントリックなので、これが絶対悪だとは必ずしもいえないのが面倒ではあるが。
脳の数理的な研究がここまで進んでいるとは知らなかったので、私としては面白かった。
興味があるならば読んでみてもよい本だろう。

以下メモ。
・個々のニューロンの状態をベクトル、シナプス結合の重みを行列で表すと、入力によってニューロンがどのように時間的に変移していくかを示す数式が得られる。
・これを基にニューロンのマクロな活動度を示す数式を作ると、分散で補整したシナプス結合の平均値がある程度大きくなれば、活動度の安定する状態が二つ現れ、どちらかの状態でマクロなニューロンの活動が安定する。
・いくつかのシナプス結合の重みを平均値として覚えると、入ってくるベクトルに応じた安定平衡状態を取り出すことができる。
・ベクトル成分のほとんどが0であるようなベクトルをスパースベクトルという。
スパークなベクトルsと行列Aがあるとして、x=Asとすると、結果xの数の少ない測定からsを求めることができる。
脳内における信号もこのようなスパースなものになっていると思われる。