『増補 湖の国の中世史』

高橋昌明 著
中公文庫
ISBN978-4-12-205065-5
近江(滋賀県)における様々な中世史話を集めた本。
地元紙の連載を出発点にしている、ということで、なるほど、そうした類の本ではある。地元紙に連載された中世史話を集めたもの、で良ければ、読んでみても、という本か。
私としては、こちらの中世史の素養が足りないためか、どの史話も短すぎ、表面をなぞっているだけで、中に切り込んでいかないうらみがあった。
新聞の掲載としてはこんなものだろうと思うので、中世史の素養がある人や、滋賀の土地勘がある人なら、それなりに楽しめるのかもしれない。
個人的には特に薦める程ではないが、そうしたもので良ければ、読んでみても、という本だろう。
以下メモ。
・垣根に使われることの多いウノハナは、家の守り神、また、初夏(卯月)に咲くことから、同じ時期に鳴くホトトギスと共に、田植え、豊穣と関わりがあると考えられていた。
 卯の花の 匂う垣根に
 時鳥 早も来鳴きて
 忍音もらす 夏は来ぬ(「夏は来ぬ」佐佐木信綱作詞)
鎌倉幕府が滅亡する時、六波羅北方(探題は南北二人いた)の北条仲時らも、逃げ延びる途中で自決した。自決に加わった多くは、北条の一門や家人、得宗被官の他、西国御家人らで、北条一門と得宗被官との緊密な関係が窺える。