『わかりやすいベトナム戦争 超大国を揺るがせた15年戦争の全貌』

三野正洋 著
光人社NF文庫
ISBN978-4-7698-2582-1
ベトナム戦争の概略が書かれた通史。
多少重複もあるし、戦争の過程を表面的になぞっただけという感もややあるが、概略としては、一応のまとまった概略という本か。概略で良ければ、読んでみても良い本。
戦争当事者であるアメリカ国内の反戦運動等の記述が少ないのが、若い読者にとってはやや難点のような気がするし、特に良い本、という程ではないとは思う。
概略を知るためには、まずまず、というところ。
そうしたもので良ければ、読んでみても、という本だろう。
以下メモ。
・1967年の段階では、アメリカ軍は、損害を出しながらも、NLF(南ベトナム民族解放戦線)や北ベトナム正規軍に対して優位に戦っており、68年年頭には、ジョンソン大統領がテレビで情勢は有利に進んでいると演説したが、そのすぐ後の1月31日(旧正月=テト)、NLFと北ベトナム軍は南ベトナム全土で大規模な攻勢作戦を行った(テト攻勢)。
(その前の数年間、南ベトナムとNLFの間では旧正月には暗黙の休戦が行われるのが常であった)
テト攻勢そのものは、軍事作戦的には多大な損失を出した北側の失敗と看做されるが、米大使館や放送局が一時ゲリラの手に落ちる等、アメリカ国民に大きな衝撃を与え、楽観論を述べてきた自国政府に対する不信感と反戦ムードとを高揚させた(ジョンソン大統領も、楽観的な報告をしていた側近に対して不信感を持ったであろう)。3月31日、ジョンソン大統領はベトナムからの順次撤兵と次期大統領選挙への不出馬を発表した。
アメリカが撤退してから二年間南ベトナムが存在できたのは、北側がアメリカ軍の再投入を警戒して攻撃を控えたからだろう。