『刑法入門』

山口厚
岩波新書
ISBN978-4-00-431136-2
犯罪とは何であり、どういう場合に成立するのか、といったことが書かれた本。
刑法そのものというよりは、刑法が拠って立つ考え方を説明したもので、そうした点で、入門書としては、よくできている本だと思う。そういったもので良ければ、読んでみても良い本。
ただし、その分もろに法学のうだうだとした議論に付き合わされるので、法学が面白いと思えない人には、面白くない本ではあるかもしれない。
用語もちょっと邪魔なだけのような気がするが、刑法の入門書ならどれも、本書程度の用語は出てくるだろうから、入門書として、割りとよくできている本だと思う。
興味があるならば、購読しても良いだろう。
以下メモ。
・犯罪とは、法律で禁止され、その違反に対して刑罰が科せられる行為。
禁錮刑は、元来、政治犯や過失犯等、道徳的に非難される動機によってなされるのではない犯罪に対して科せられていた。
・第一級殺人罪、第二級殺人罪等の区別がない日本の殺人罪は、それだけ刑の幅が広く、裁判所の裁量の余地が大きい。
・尊属殺規定の最高裁違憲判決は、尊属という身分による不平等が憲法違反であるというのではなく、定めた刑が一般の殺人罪に比べて重すぎるのが、憲法違反であるとした。
・日本の裁判実務では共同謀議に加わっただけの者でも共同正犯となることを認めてきた(共謀共同正犯)。
・正当防衛は、「急迫不正の侵害」がある時にだけ認められるが、野生動物は不正なこと(法的に禁止されたこと)をなしようがないから、文字通り解釈すると、野生動物や物に対する正当防衛は認められない、ということになりかねない。
(よくアメリカなんかの法律に、野生の○○は××をしてはいけない、という規定があると笑い話になったりするが、そういう規定にも意味があるということなのだろうか。野生動物は責任を阻却されるだろうが)