『ラジオの戦争責任』

坂本慎一 著
PHP新書
ISBN978-4-569-69775-8
戦前のラジオに携わった人々5人の列伝風読み物。
一応、大体の主題としては、それらの人々の活躍を通じて、戦前の時代の日本においてラジオが持った影響力の大きさを説いたものであり、その影響力の大きさから、タイトルにあるように、ラジオが狂気の戦争へと国民を導いていったのではないかと示唆したものではあるが、本書全体で直接に論じられている訳ではないので、戦争責任云々を論じた本、というよりは、戦前のラジオに関った人々の列伝、と考えておいた方が適切な本か。
戦前という時代の一断面を知るためには、いろいろと面白かったので、そうしたもので良ければ、読んでみても良い本。
テーマ的には、もっと直接にラジオの戦争責任を問うた方が良かったのではないかとも思うが、そこまで研究は進んでいないのだろう。深く掘り下げられてはいないので、今のところは一断面を知るという以上のものではないが、時代の一側面を知るにはそれなりに面白い読み物だと思う。
そうしたもので良ければ、読んでみても良い本だろう。
以下メモ。
・明治時代、聖徳太子は、逆賊蘇我馬子の味方だとして、評判が悪かった。高嶋米峰等の仏教の啓蒙家がラジオ講義を繰り返すことで、聖徳太子の評価が上がった。彼ら仏教啓蒙家は、同時に、働くことが修行になると説いた。
真空管のラジオは低音が聞き取り難かったので、東條英機等、声の高いラジオ演説家に人気があり、ヒトラーなども声のトーンを上げて絶叫調で演説をした。
松下電器が大阪から門真へ移動する時、鬼門の方角に移るのは縁起が悪いという意見もあったが、松下幸之助は迷信の打破を訴えた。