『視聴率調査はなぜウチに来ないのか 最新マーケティングが90分でわかる本』

酒井光雄 著
青春新書INTELLIGENCE
ISBN978-4-413-04189-8
マーケティングに関する入門読み物。
形式的には、マーケティングに関するコラム集、みたいな形になっているが、それなりにまとまりはあるので、入門読み物、と考えておけば良い本だと思う。マーケティングに関する入門読み物が読みたければ、読んでみても、という本か。
基本的なテーマを一つ挙げれば、ネット時代になってメーカーは小売を介さずに顧客と結び付けるようになったのだから、既存のお客を大事にすることを考えよ、というものがあるような気はし、それがまとまりを持たせているような感じはするが、雑多なコラム集なのでそんなテーマはないかもしれない。
大体のところ、ありがちで標準的なマーケティングに関する本で、入門読み物としては悪くない本だろう。
ありがちな分、私としては、既に知っているような話がメイン、という感もあったが。後、著者が男性で男性視点が多いという印象も受けるし、大人の女性向けの商品では対象の実年齢をアピールすることは避ける、と書かれているのは、理論的にはその通りのように思うものの、40代からの化粧品はそれより若い人にも売れているらしい。
しかし、既知のことが多いのは入門読み物の宿命だろうし、実際上男性ビジネスマンがターゲットの中心なのだろうから、入門読み物で良ければ、良い本だと思う。
興味があるのなら、読んでみても良い本だろう。
ちなみに、光文社新書みたいなタイトルは、内容と余り関係がないので失敗。何を根拠に90分で分かるとしているのかは知らないが、240p弱ある本を90分で読める人は、かなり本を速く読める部類に入る人だと思う。
以下メモ。
・かつて中価格帯でその正確さを誇った日本メーカーの時計は、携帯電話の普及で腕時計が必需品とはいえなくなり、苦しくなった。
・コンビニ等のPOSシステムでは、売れなくなった商品がすぐに分かり、カットアウトされてしまうので、メーカーは、自社製品の置き場を確保し続けるために、新製品を次々と出さざるを得ない。
・全体としてのトップ企業にならなくても、ある分野で1位になれば、○○ナンバー1、という広告を打ってアピールすることができる。
・街はメディアであり、おしゃれなブティックやレストランはおしゃれな街に出店すればそれだけで価値が高まる。
マイレージやポイントサービスは、固定費の比率が高い企業が行うものであり(固定費比率の高い航空会社は、空席で飛ぶところを無料の乗客を乗せて飛ばしても利益が極端に落ちる訳ではない)、普通の小売が無闇に行ってもただの値引きになりかねない。