『ノーベル賞受賞者の精子バンク 天才の遺伝子は天才を生んだか』

デイヴィッド・プロッツ 著/酒井泰介 訳
ハヤカワ文庫NF
ISBN978-4-15-050330-7
ノーベル賞受賞者精子バンクとして有名になった精子バンクに関して書かれた本。
精子ドナーにノーベル賞受賞者を集めたのは最初だけで、ドナーのなり手が少なかったこと、高齢者が多いノーベル賞受賞者ではダウン症等のリスクが高まること、顧客である女性も特にノーベル賞受賞者だけを望んだ訳ではなかったこと、から、この精子バンクによって生まれた子供の中にノーベル賞受賞者精子ドナーとする子はいなかった)
創業者の(優生学的)思想や精子バンクの経緯に絡めて、ドナーと生まれた子供たち、及びその家族のその後を描いたドキュメンタリー。
ドキュメンタリーとしては悪くない本だし、精子バンクによって生まれた子供と家族や父親との関係を探る一つのケーススタディではあるだろうから、そうしたもので良ければ、読んでみても、という本か。
読み物としては、読めないことはなく、これもあり、というところ。
ただし、私としては、ノーベル賞受賞者の子供がいない、というだけでも、そう特別に興味を惹かれるような内容ではなかった。
ノーベル賞受賞者の子供がいない以上、事実上の、というか実際問題のテーマは、天才が天才を創るか、ということではなく、精子バンクで生まれた子供と父との関係、というものにならざるを得ないだろうから、もっと、そういうものとして書かれ、また読まれるべき本ではなかったのだろうか。その辺りが曖昧なので、一冊の本の内容としてぼやけてしまっている印象がある。
読み物としては読めない訳ではないので、悪いという本でもないが。
それでも良ければ、というところだろう。