『なぜ人の脳だけが大きくなったのか 人類進化最大の謎に挑む』

濱田穣 著
講談社ブルーバックス
ISBN978-4-06-257540-9
人類進化における脳の巨大化とそれに伴う身体、社会の変容について書かれた本。
別に悪いということはないので、こういうのが好きならば読んでみても、という本だが、個人的には、そんなに、面白い、という程、面白くもなかった。
評価を一言でいえば、微妙。こういう本なのでこういう本が好きな人には良いのだろう、といってみても、こういう、というのがどういうものなのか、というのが難しい訳で。
大体のイメージとしては、一般向けの科学読み物で(大抵は海外の学者等が書いてたりするようなやつで)、人類進化、とりわけ脳の発達について書かれたもので、新書サイズで250pくらいなのでややコンパクトで、そこに現代社会批判を少々(かつて人類がそれに適応して進化してきた環境と、現代社会の環境とが違うのは当然のような気もするが)、といった感じの本か。
個人的に気になったのは、事実を根拠にした議論が少なめで、従って全体に思弁的で、それは良いとしても、コンパクトにし過ぎたせいか必要な議論がところどころ欠けているように思われること。そういう本だといえば、そういう本ではあるが。
悪いということはないが、私としては強く薦める程のものでもなかった。
それでも良ければ、読んでみても、というところだろう。
以下メモ。
アウストラロピテクス類の指の骨はまだ木登りに適した形状をしており、二足歩行は、サバンナではなく林の中で広い範囲を歩き回るために発達したらしい。
・一つのコラム状ユニットの親となる前駆細胞の分裂増殖が、マカクでは胎生齢40日、ヒトでは胎生齢43日まで続くと推定されており、このわずかの差が、ヒトに大きな脳をもたらしている。
・人類進化の後期段階では腹部が小さくなっており、大きな脳が必要とするエネルギーを提供するために、消化管が使う分を削ったのだろう。小さな消化管でも大丈夫なように、調理が行われた。
・霊長類は、基本的に樹上で生活するので、危険が少なく、死亡率が低い。そのために、寿命が長く、子供をゆっくり育てるように進化してきたのだろう。霊長類の中でもヒトはとりわけ寿命が長いが、その理由として、祖母が、娘による孫の養育を支援したから、ということが考えられる。