『おまけより割引してほしい 値ごろ感の経済心理学』

徳田賢二 著
ちくま新書
ISBN4-480-06334-X
値ごろ感を巡る消費者心理について書かれた本。
実証的研究を紹介したものでは全くないが、読み物だと思えば、一応はそれなりの読み物、という本か。
(というか、本書の記述を裏付けるような実証的研究が本当になされているかどうかは、やや疑わしい気がする)
心理学関係の本としては、細かな実証研究の紹介が圧倒的に足りないとは思うが、経済学読み物、あるいはビジネス読み物とすれば、多分それなりの本なのだろう。
元々経済学というのは細かな実証研究をやりたがらない分野ではあるし、心理学というのはちょうどその真逆ではある(心理学でも精神分析みたいなのもあるが。その意味で、本書のフレームがマズローなのは、ナルホドというか)。しかし同じことが書いてあっても、経済学関係の本だと見過ごせても、心理学関係の本だと思うと微妙に信頼性に問題がありそうに感じるのは、期待が違うせいだろうか。そういえば、行動経済学って、実証的研究はどの程度やられているのだろう?
いずれにしても、私としては本書は余り良い本だとは思わない。実証研究なんか抜きで読み物で良い、という人なら、読んでみても、というところだろう。
以下メモ。
・価格は、一方ではその商品の価値を示す指標でもあるから、バーゲンで値下げした商品をバーゲン終了後に元の価格に戻した時、買い手にとって、その商品の商品価値は目減りしている。
・一度所有したものの価値は所有していないものの価値よりも大きく見えるので、自動車販売店ではフル装備の車に試乗させる。一度フル装備の車を体験すれば、オプション抜きの車を購入して乗るのは損をしたような気分になる。
・何かのついでにものを買うことは、時間等の余計な費用が発生しないので、非常なお得感がある。