『憲法「押しつけ」論の幻』

小西豊治 著
講談社現代新書
ISBN4-06-149850-9
日本国憲法成立史の一断面を描いた本。
明治憲法制定前の植木枝盛憲法草案が、敗戦直後に高野岩三郎や室伏高信らが植木を研究していた鈴木安蔵を入れて作った憲法研究会の手になる憲法草案要綱を通して、間接直接に影響を与え、日本国憲法の基盤になった、ということが主張されたもの。
タイトルのようなイデオロギー的な側面もなくはないので、反対者にはうざいかもしれないが(反対者にとっては、本書の通りであったとしても、それは植木の憲法アメリカによって押し付けられただけ、ということになるのではないかと思うし)、大体のところは、憲法成立史に関する歴史本だと考えて良い本だと思う。
そうしたもので良ければ、読んでみても、という本か。
影響を与えた、なんていうのが何を以ってどこまで論証されたと看做すべきかはおおいに問題があるとはいえ、一断面を描いた、という以上の強い証明がなされているとは余り思えないが、悪くはない本ではないかと思う。
興味があるならば、読んでみても良い本だろう。
メモ1点。
植木枝盛は、GSが記者会見で名前を出しても、日本の記者の方がその名前を知らない程度の存在であったらしい(ケネディ上杉鷹山を、みたいな話だ)。