『歴史探索の手法 岩船地蔵を追って』

福田アジオ 著
ちくま新書
ISBN4-480-06297-1
享保四年に流行した岩船地蔵に関して書かれた歴史民俗学的な読み物。
読み物としてはサブテーマがあるなどそれなりに工夫もしてあって、悪い本ではなく、十分に標準レベルの歴史民俗学的読み物だと思うが、いかんせん、素材がどマイナーで、そこを越えるものはない、という本か。
悪い本ではないと思うので、興味があるのなら読んでみても良い本なのだろうが、一般向けにそこまで興味を惹く素材かどうかは、やや疑問ではある。
それでも良ければ、というところ。積極的に薦めるにはマイナー過ぎるようには思う。
以下メモ。
・岩船地蔵に限らず、近世の流行り宗教が村から村へと村単位で村送りされたのは、村が近世における重要な生活単位だったからである。
・西関東から甲信越駿河に今も残る岩船地蔵の多くは、流行した享保四年やその直後に造られたものだと考えられるが、現在に残る伝承としては、享保四年の流行を伝えるのではなく、(船に乗っている形などから)水難除け等が由来として語られている。