『陰陽師 安倍晴明と蘆屋道満』

繁田信一
中公新書
ISBN4-12-101844-3
陰陽師に関連して、いくつかのことが書かれた本。
諸所に発表した雑文を一冊にしたものという訳でもないようだが、割とそんな感じの、ややまとまりには欠ける本で、一応、主要部分としては、藤原道長安倍晴明が活動していた1000年前後の平安貴族の日記から、陰陽師の活動実態や、それとかかわる禁忌や除厄等の平安貴族の民俗を紹介したもの、と考えれば間違いがない。
全体的に、良くもないが悪くもなく、といった十把ひとからげの平均レベルの本なので、そういう内容の平安民俗紹介本で良ければ、読んでみても、という本か。
良くいえば、一つ一つの事例で史料を丹念に紹介している、とはいえるが、悪くいえば、その分、事例の厚みには欠ける。
割とノリで書いてしまったような便乗本っぽい出来の本で、格段優れているということはないが、別に悪くはないので、こんなものだといえばこんなものではあるだろう。それで良ければ、というところだと思う。
メモ1点。
・平安後期の貴族社会は、晴明流安倍氏よりも安倍晴明の師である賀茂保憲の方に権威を認めており、晴明の子孫たちには家祖の安倍晴明を祭り上げる必要があった。