『不老不死のサイエンス』

三井洋司 著
新潮新書
ISBN4-610159-9
老化と寿命に関する研究の現状を簡略にまとめた本。
新潮新書らしい簡略なまとめ、といえば、確かにその通りのものではあるが、ただし、レトリックや文章表現には、余り巧くなく分かり辛い箇所がある。
(エンドセリンの機能についての説明とか。文章がおかしな例としては、「なぜなら、白血球が侵入してきた細菌を殺すのは、こうした活性酸素から転換したフリーラジカル(遊離活性基)という一群の活性物質だからです。」とか。
ちなみに、おわりに、には、ゴーストライターの名前も書かれているが)
余人を以って替え難い専門的な話題なら、これで仕方がない、と諦めるのかもしれないが、このテーマで且つ簡略なまとめで良いのならば、他に良書もあるのでは、というのが、正直な印象。
良くいって、他に全く何もなければ、というところであり、無理に、という程の本ではないのではなかろうか。
駄目という程、悪い本ではないが、元々、新潮新書らしい簡略なまとめは無理にというものでもないのに、更に、無理にという程ではない、とくれば、若干厳しいのではないかと思う。
それでも良ければ、というところだが、別に薦めるような本でもない。
以下メモ。
・体細胞は特定の機能を持つので、クローン動物の実験が余り巧く行かないのは、この体細胞機能の初期化が巧く行っていないから、という考えもできる。
・成体幹細胞の分裂回数には限界がある。
・これまでに分かっている寿命にかかわる遺伝子としては、活性酸素を抑えるものと糖の利用に関するものがある。また、カロリー制限を行うと寿命が延びることは多くの実験で報告されているが、それには、カロリー制限を行うと、タンパク質からアセチル基を取り除くデ・アセチラーゼの活性が高まり、細胞分裂を抑えてガン抑制にも働くp53タンパクが脱アセチル化されて活性を失うことがかかわっているらしい。