『はじめての<超ひも理論> 宇宙・力・時間の謎を解く』

川合光 著
講談社現代新書
ISBN4-06-149813-4
素粒子論、量子力学から超ひも理論への展開を述べた本。
私の見解では、大体のところ、クオーク等の素粒子論や量子力学を既にある程度知っている人が、その先の超ひも理論がそこからどのように展開されようとしているのかを知るための本、と考えるのが、最も穏当だろうか。
「はじめての」と銘打たれているが、基本的には中級者以上向き。少なくとも量子力学を知らない人が読んだら、多分、余りよく分からないのではないかと思う。
そうしたものなので、そうしたもので良ければ読んでみても、という本か。特に分かりやすいとか興味深いとかいうことはないと思ったが、駄目という程悪いものでもない。
素粒子論等から順々に展開しているので、筋道をたどることができる分、これで分かる人には分かりやすいかもしれない。ただし、素粒子論や量子力学をある程度は知っていて、超ひも理論は殆ど全く知らない人、となると、向く読者はかなり絞られるような気はする。超ひも理論の本は二冊目の私がいうのもなんだが。
もう少し、超ひも理論そのものの話が充実していても良かったのではないだろうか。
素粒子論や量子力学も余りよく知らない人が、本書で一気に超ひも理論まで知ることができれば、それが理想なのだろうが、そこまでは少々厳しいように思う。
後は、自分に合っていると思えば、というところ。
以下メモ。
超ひも理論を使ってある種の量を計算していくと、1/2の量が2倍の量に等しくなるTデュアリティという現象が出てくる。
アインシュタインの方程式を解くと、真空のポテンシャルエネルギーが正の値で、余り運動をしない状況の時には、負の圧力がかかる。宇宙初期のインフレーションはこの圧力によって起こされた。真空のエネルギーはアインシュタインの宇宙項と同値である。