『梶原一騎伝 夕やけを見ていた男』

斎藤貴男
文春文庫
ISBN4-16-744304-X
梶原一騎の評伝。
私には余り好きになれるタイプの本ではなかったが、全体的には普通の評伝だといえば普通の評伝なので、興味があるならば読んでみても、という本ではないだろうか。
薦めはしないが、特に悪いというものでもないと思う。
私が好きになれなかった理由は、一言でいえば、この腐れ左翼が、という感じか。良くいえば感傷的、悪くいえばナイーブな感じのする本。文庫版あとがきの最後のところに、「人間が人間であることができた時代を惜しんで」などと書かれているように。
(どっちかというとこういう科白は腐れ保守が吐くものだろうが、そこが腐れ保守と腐れ左翼は紙一重というか、斎藤貴男が文春と岩波の両方に書ける所以なのだろう)
私は梶原一騎にそれ程の思い入れはないし、本書を読んでも好きになれるタイプの人ではなかったので、著者の梶原一騎に対する共感に共感できない、という感じもある。
だから私としては薦めないが、それでも読んでみたい人には、特に悪いというものでもないのではなかろうか。後は御随意に、というところだろう。