『女帝の古代史』

成清弘和 著
講談社現代新書
ISBN4-06-149794-4
女帝に関していろいろなことが書かれた本。
全体的なパースペクティブとしては、古代日本に女帝が数多く出たのは、双系的な社会構造の元で女性の地位が高かったからだ、ということが主張された本ではあるが、実際には、かなり雑多なことがあれこれと書かれていて、散漫でまとまりのない本。卑弥呼から孝謙天皇まで一冊の本で扱おうとすると、そこにどうしても無理が出てくるのだろうとは思うが。
良くいえば、概説と割り切るならば読んでみても、というところか。この手の本は他にもあり、私も読んだことがあるので本書で啓発されたことは余り多くなかったが、初めての人にはそれなりの本ではあるかもしれない。
敢えて問題点を挙げれば、本書には訳の分からない議論をしているところが若干ある。中国の史料が日本の史料を参照していることが明らかなのに、日本の史料と中国の史料で共通のことが書かれているから、云々、という判断はよく分からない、とか。
特に悪い訳でもないが、類書の中で特に本書を、という程のものはないと思う。
メモ1点。
・下層出身で一時的にトランス状態になるのがシャーマンで、上層出身で通常意識のまま神に接近できるのが、祭司。